緑内障
緑内障は、目と脳をつないでいる神経のケーブル(網膜神経節細胞)が障害され、その部分の視野がかすんでくる病気です。神経細胞が死んでしまうことによるので、残念ながら一度失われた視野は治療しても元には戻りません。そのため、自覚症状がない早期の時期から発見し、適切な治療を行うことが重要です。通常、緑内障は年月をかけてゆっくり進行しますが、そのスピードには個人差があります。ご自身の神経の状態を早くから知り、眼科医と相談しながら治療を継続することが大切です。
緑内障に関わるものとして有名なのが、眼の圧力(眼圧)です。眼圧が高い状況では神経が押しつぶされ、その状態が継続すると神経細胞が死んでしまいます。そのため、緑内障の治療の中心は眼圧を下げることです。具体的には、点眼治療やレーザー治療、手術治療などがあります。また、強い近視や血のめぐりが悪いことなども関与しており、専門的な施設での評価が必要になる場合もあります。その他、女性、冷え性、低血圧、偏頭痛、家族に緑内障の方がいる場合も緑内障のリスクが高くなりますので、健診や眼科受診など目のメンテナンスを怠らないようにしましょう。
加齢黄斑変性症
加齢黄斑変性症とは
加齢黄斑変性症は、黄斑部という物を見るのに最も重要な網膜の中心部が老化で障害されていく病気です。世界中で中途失明原因の上位を占め、超高齢社会を背景に日本でも患者数が増加し、我が国の失明原因の4位に位置しています。加齢黄斑変性症は50歳以上に多く、初期の症状は物がゆがんだり真ん中が見えづらくなることが多いです。進行すれば中心が暗く見えるようになり、視力が低下します。
しかし、片目だけに発症している場合は、症状に気付きにくく発見が遅れるケースもあります。早期発見には、健診で行う眼底写真やアムスラーチャートを用いたスクリーニング検査が有用となります。加齢黄斑変性症の根治的な治療はまだ開発されていませんが、新しい薬物治療などによって改善したり、進行が抑制されるようになってきています。常日頃から左右での見え方に違いがないか確認することを心がけましょう。
日本における加齢黄斑変性症
50歳以上の約1%程にみられ、年を重ねるごとに多くなります。また、患者数も年々増える傾向にあります。日本人では、諸外国に比べ、男性に多いことが特徴です。理由として、高齢者における男性の喫煙率が高いことが影響している可能性があります。
加齢黄斑変性症になりやすい人
加齢黄斑変性症は年を重ねると誰にでも発症する可能性があります。発症のリスクを高めるのは、加齢だけでなく、喫煙や太陽光なども関係していると報告されています。これらのリスクを高める要因を避けることは、加齢黄斑変性症の発症を予防し、進行を遅らせると考えられています。
眼科の検査
加齢黄斑変性症の診断や治療の経過をみるために、主に次のような検査が行われます。
| 視力検査 | 一定の距離から、視力検査表を片眼ずつ見て、どの大きさまで見えるか調べます。見えにくい場合は、検査表に近づいて測定します。 |
|---|---|
| 眼底検査 | 目の奥に光りをあてて、網膜を直接観察します。網膜の血管の状態、出血や滲出の有無を見ることができます。 |
| 蛍光眼底造影 | 蛍光色素の入った造影剤を腕の静脈から投与して、眼底カメラで眼底の血管を観察します。血管の形や位置、血管からの血液中の水分のもれ具合などがわかります。 |
| 光干渉断層計(OCT) | 網膜は10層構造になっており、その層構造を断面的に観察する検査です。網膜の腫れや血管の状態がわかります。 |
加齢黄斑変性症の治療法
加齢黄斑変性症の診断や治療の経過をみるために、主に次のような検査が行われます。
| 抗VEGF薬治療 | 血管を増やすというVEGFのはたらきを抑えるお薬を目に注射します。抗VEGF薬を目の中に注射することで、新生血管の成長を抑え、新生血管からの滲出液や出血を止めることにより症状を改善します。 抗VEGF薬による治療は、一旦症状がよくなっても、再発することが多いため、定期的に検査と治療が必要です。気が付かないうちに病状が進行して、視力が低下したり見えにくい範囲が広がるのを防ぐためにも、定期的な検査と治療が大切です。 |
|---|---|
| 光線力学的療法(PDT) | 光に反応するお薬を腕の静脈から投与し、弱いレーザーを黄斑に照射して、新生血管を閉塞させます。 |
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症とは
糖尿病にかかり長い年月が経つと、体のあちこちに合併症として障害が起こってきます。その中で、「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経症」が3大合併症として有名です。糖尿病網膜症は、わが国の成人の失明原因の上位を占める疾患です。
糖尿病網膜症は、高血糖により目の血管がぼろぼろになることで起こり、大きく3つの段階に分けられます。
単純糖尿病網膜症は小さな網膜出血や血管のこぶ(血管瘤)がみられます。前増殖糖尿病網膜症では、やや大きな出血を認め、網膜の血のめぐりが低下して、この段階になると血糖コントロールだけでは網膜症は治らず、レーザー治療や硝子体注射、場合によっては手術が必要になります。この段階までは自覚症状がない場合が多くあります。
増殖糖尿病網膜症では、網膜の酸素不足が顕著となり、目のあちこちに病的な血管(新生血管)が発生します。新生血管が破れれば目の中の出血(硝子体出血)を生じ、他にも牽引性網膜剥離や新生血管緑内障を生じ失明の危険が高くなります。また、いずれの時期においても、視力低下を引き起こす糖尿病黄斑浮腫を生じる可能性があります。
糖尿病の診断を受けている方は、症状がない時期においても眼科の定期診察が必要です。
糖尿病黄斑浮腫とは
糖尿病黄斑浮腫は、網膜の細い血管にコブができたり、血管から血液中の成分がもれだし、それが網膜内にたまっている状態です。そのため、ものの詳細を見分けたり、文章を読んだりするのにとても大切な場所、「黄斑」がむくんでしまい、ものが見えづらくなります。
日本における糖尿病網膜症
糖尿病網膜症の有病率は糖尿病患者の2~3割との報告があります。近年、糖尿病患者数が増加しており、今後、糖尿病網膜症も増加する可能性が指摘されています。
糖尿病網膜症になりやすい人
糖尿病歴は10年以上、HbA1cは7.0%以上だと、糖尿病網膜症の発症リスクが高くなります。血糖値を良好に保つことは、糖尿病網膜症だけでなく、ほかの糖尿病合併症も遠ざけることに繋がりますので、よりよい血糖コントロールをめざしましょう。
眼科の検査
糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫を診断するため、もしくは治療の経過をみるために、主に次のような検査が行われます。
| 視力検査 | 一定の距離から、視力検査表を片眼ずつ見て、どの大きさまで見えるか調べます。見えにくい場合は、検査表に近づいて測定します。 |
|---|---|
| 眼底検査 | 目の奥に光をあてて、網膜を直接観察します。網膜の血管の状態、出血や網膜のむくみ(黄斑浮腫)の有無を見ることができます。 |
| 蛍光眼底造影 | 蛍光色素の入った造影剤を腕の静脈から注射して、眼底カメラで眼底の血管を観察します。血管の形や位置、血管からの血液中の水分のもれ具合などがわかります。 |
| 光干渉断層計(OCT) | 網膜は10層構造になっており、その層構造を断面的に観察する検査です。黄斑浮腫など網膜のむくみの状態もわかります。 |
糖尿病黄斑浮腫の治療法
糖尿病黄斑浮腫に対して、現在行われている主な治療法には以下のものがあります。
| 抗VEGF薬治療 | 糖尿病網膜症に伴う糖尿病黄斑浮腫の原因の1つに、VEGFという物質があります。抗VEGF薬を目の中に注射することで、黄斑浮腫を減らします。 |
|---|---|
| ステロイド薬治療 | ステロイド薬には炎症を抑える作用があります。そのため、ステロイド薬を目に注射して、黄斑のむくみを抑えるようにします。 |
| レーザー光凝固 |
① 直接光凝固 ② 格子状凝固 |
| 硝子体手術 | 網膜剥離や硝子体出血が起こっている場合に行われる手術です。眼の中の出血を止め、異常な組織を取り除いたり、はがれた網膜を元に戻します。 |
網膜静脈閉塞症
網膜静脈閉塞症とは
網膜静脈閉塞症では、網膜の静脈が詰まり静脈の圧力が上がり、網膜の血管が広がったり、出血したりします。また、網膜に血液中の水分がたまったりして、網膜がむくみ黄斑浮腫を起こします。
日本における網膜静脈閉塞症
40歳以上の日本人では網膜静脈閉塞症の有病率は2%程との報告があります。男女共に有病率は年齢と共に増加する傾向にあります。
網膜静脈閉塞症になりやすい人
網膜静脈閉塞症は、年を重ねると発症しやすい病気で、高血圧や動脈硬化と深い関連があります。網膜静脈閉塞症の患者さんの多くは、高血圧のある方です。これは、高血圧により、血管がダメージを受けること、つまり動脈硬化が影響しています。高血圧のほかにも、血管自体の炎症により発症したり、糖尿病などの血液の粘性が増す病気がある方でも発症しやすくなります。また、緑内障のある方も発症しやすいと言われています。
見え方の変化
網膜静脈閉塞症では、黄斑浮腫が起きると、視力が急に下がったり、ものが見えにくくなる、見えない部分があるなどの症状が出ます。特に黄斑部分に出血やむくみができると、かすんで見えにくくなったり、黒っぼく見える部分ができたりします。
眼科の検査
網膜静脈閉塞症を診断するため、もしくは治療の経過をみるために、主に次のような検査が行われます。
| 視力検査 | 一定の距離から、視力検査表を片眼ずつ見て、どの大きさまで見えるか調べます。見えにくい場合は、検査表に近づいて測定します。 |
|---|---|
| 眼底検査 | 目の奥に光りをあてて、網膜を直接観察します。網膜の血管の状態、出血や黄斑浮腫の有無を見ることができます。 |
| 蛍光眼底造影 | 蛍光色素の入った造影剤を腕の静脈から注射して、眼底カメラで眼底の血管を観察します。血管の形や位置、血管からの血液中の水分のもれ具合などがわかります。 |
| 光干渉断層計(OCT) | 網膜は10層構造になっており、その層構造を断面的に観察する検査です。黄斑浮腫など網膜の状態がわかります。 |
網膜静脈閉塞症の治療法
網膜静脈閉塞症に対して、現在行われている治療法には以下のものがあります。
| 抗VEGF療法 | 網膜静脈閉塞症による黄斑浮腫の原因の1つにはVEGFという物質があります。抗VEGF薬を目の中に注射することで、黄斑浮腫を減らします。 |
|---|---|
| レーザー光凝固 | レーザー光線を血の流れの悪い部分などに照射して、黄斑浮腫を抑えます。また、光凝固は重症化を防ぐために予防的に行われる場合もあります。 |
| ステロイド療法 | 炎症を抑える作用があるステロイド薬を目に注射して、黄斑浮腫を抑えます。 |
| 硝子体手術 | 他の治療法で十分な効果が見られない場合や硝子体出血が起こっている場合などには硝子体手術が行われることがあります。 |
白内障
白内障の症状は?
白内障の代表的な症状は、下記のようなものが挙げられます。
- ものがぼやける、かすんで見える
- 眼が疲れやすい
- 人や物が二重に見える
- 近くが良く見えるようになる(老眼が治った気がする)
- 晴れた日の屋外や対向車のライトがまぶしく感じる
白内障の治療は?
日常生活で支障がない程度であれば、点眼薬や内服薬により、白内障の進行を遅らせます。
これらの薬剤は、水晶体を濁るスピードを遅らせるもので、症状を改善したり、視力を回復させることはできません。
白内障が進行して、日常生活に不自由を感じるようであれば、手術を行います。白内障以外の病気がある場合は、手術方法を工夫したり、全身状態をみて手術時期を決めます。
手術を考えるときは、医師とよく相談しましょう。
白内障手術のタイミングは?
自分で「困ったな」、「見え方が楽しくないな」と思った時が手術のタイミングです。
- 視力が低下して、仕事や生活に支障がある。
- 外ではまぶしくて、見えずらい。
- 日常的に車を使っているが、車の運転に不安を感じる、または眼鏡をかけても視力が0.7以下になり、運転免許の更新ができない。
進み過ぎる前に手術を受けるようにしましょう。
極度に進んだ白内障は、手術の際の合併症が起きやすく、術後視力に影響が出ます。
白内障手術はどんな手術ですか?
ここでは、超音波で水晶体を取り除く方法をご紹介します。ほとんどの白内障手術では、この方法が採用されています。
※ 眼の状態によっては、異なる方法になる場合があります。
麻酔をかける
ほとんどの白内障手術は点眼麻酔。麻酔によって手術中はほとんど痛みを感じません。
眼内レンズを入れる穴を作る
水晶体を包む袋(水晶体嚢)の前面に丸く切れ目を入れます。精密な作業のため、顕微鏡で手元を見ながら行います。施設によっては、この作業をレーザーを用いて行うことがあります。
濁った水晶体を取り除く
水晶体嚢の切れ目から器具を入れ、超音波で水晶体を砕きながら吸引して取り除きます。
眼内レンズを入れる
空になった水晶体嚢の中に眼内レンズを入れ、固定します。
白内障の症状は?
眼内レンズがまだなかった頃、白内障の手術は濁った水晶体を取り除くだけのものでした。しかし、その方法による手術後は強度の遠視となってしまい、患者さんは分厚い眼鏡をかけざるを得ませんでした。
その後、人工水晶体である眼内レンズが誕生し、手術後の患者さんの生活は快適なものになりました。
ほとんどのレンズが、柔らかいアクリル樹脂でできています。柔らかい素材を使うことで、下図のようにレンズを折りたたんだ状態で眼の中に挿入することができます。








